世界が待ち望んだ新海誠作品の最新作『天気の子』を観てきました!作品の感想を述べ気になる点を考察したいと思います。
※記事は作品を観終わってから読むのを推奨
あらすじ
家出し上京してきた帆高。彼が東京で出会ったのは『100%の晴れ女』の異名を持つ陽菜。
2ヶ月間雨が続く異常気象の東京を祈るだけで晴れにしてしまう陽菜の力に目をつけた帆高は陽菜と2人で晴れ女ビジネスを始める。
依頼を遂行し、人々に晴れと笑顔を届けていく2人。しかし『晴れ女』の力には2人が想像もつかなかった大きな代償が隠されていて・・
重ね重ねになりますが、以降は作品の内容にガッツリ触れていくので観に行く予定がある方は『あらすじ』を読むだけに留めておいてください(笑)
見所
展開の起伏と天候の連動
『天気の子』と題してるので、天候の変化は目まぐるしい。作中のほとんどが雨だったが、晴れや夏の雪、雲の上からの描写まで網羅。
過去作品『言の葉の庭』では雨の描写に力を入れていてその美しい映像が話題になっていましたが、『天気の子』ではベースは悪天候の雨だが、陽菜の力によって時折訪れる晴れ間の描写が恐ろしく美しい。それもバリエーションが豊富!
『雨→晴れ』と変化の幅が大きく、綺麗な空のシーンだけでも劇場へ足を運ぶ価値はあるかと!
音楽
前作『君の名は。』に引き続き今回も楽曲はRADWIMPSが担当。
作品の要所で流れるRADWIMPSの楽曲のタイミングと曲調が抜群にイイ。曲調は前作に比べ爽やか路線マシマシといったところ。クライマックスシーンで流れる『愛にできることはまだあるかい』がスーッと耳に、身体に染み渡る。
豪華声優陣とサプライズ出演
帆高役の醍醐虎汰朗さんは、声質が入野自由さんに似ていて王道の少年声で非常に役柄とマッチしていました。
帆高の上司となる須賀さん役は小栗旬さん、目が死んでてもじゃっとしている見た目がどこぞの銀さんに似ているので、もうこれは『須賀=銀さん』と言っても過言ではないぐらい(笑)
魅力的なキャラクターである夏美には本田翼さん。
ちょっと演技が気になりましたね(´Д`)
作中での活躍も多かったし夏美は声優さんに担当してほしかったかなぁ。
エンドロールを観ると羽鳥アナも出てたようですがわかりませんでした・・。
そしてサプライズ出演の『花澤綾音』
『言の葉の庭』でヒロインを演じた花澤香菜さんと、佐倉綾音さんが登場。序盤にちょい役で出てきてただのサプライズかと思いきや終盤で重要な役どころになるという意外性。
過去作品キャラの登場
意外性といえば、一番のサプライズは『過去作品キャラの登場』ですね。以前、新海作品の記事を書いた時に「サプライズ登場はあるか!?」と書いていたのです。
・・結果、
『天気の子』には『君の名は。』の瀧や三葉、てっしーなどの主要キャラ達が登場。それも端に移り込んでるだけではなくガッツリ絡みがあります!
「うぉぉ・・」
「マジか!」
という声が周りでチラホラ聞こえてきました。
かなりのファンサービスですが、これは新海誠監督の意思ではないような気がします。・・なんとなく(笑)。色々とあるんだろうなぁ・・
感想と考察
美しい映像と展開にバッチリハマった音楽。
これだけでも劇場へ足を運ぶ価値は十分にあります(*´▽`*)
前作との比較
テーマ
前作『君の名は。』と同じく「災害」を扱った作品。 「隕石の落下」という身近ではない題材だった前作に対し、『天気の子』は「異常気象」という現実世界とリンクした内容。
リアリティのある題材だったので、前作よりも話にのめり込みやすい作品だったと思います。また、ヒロインの心情とリンクさせその移り変わりを天候で表現していたのは分かりやすくて◎
主人公とヒロイン
前作『君の名は。』では主人公とヒロインの入れ替わりを描いていたので、どちらも均等にキャラの掘り下げが行われていたが、『天気の子』では主人公もヒロインの掘り下げもあまりなかった印象。
陽菜は『晴れ女』の悲劇を背負ったヒロインという記号でしかなく掘り下げはあまりされていない。スポットが当たりがちだった主人公の帆高は、家出して上京するほど今の環境に馴染めなかったのだがその掘り下げはほとんどなし。
一見、説得力はなさそうに見えるが、この年代の男子ってどこか世界を窮屈に感じ環境を変えたいと漠然と思いがちな人種なので逆に掘り下げをしない方がリアル感が出てよかったかなと個人的に思います。
とはいえ、帆高の真っすぐすぎるキャラクターの暴走が生む展開はちょっと納得しがたかなと思います。クライマックスでの陽菜を想うが故の帆高の暴走ともいえるシーンは、彼の行動自体が自分の首を絞める結果になったのでただの自業自得ではないかと・・
気になるエンディング
要約すると『天気の子』は自分の中で何を優先するか何を選ぶのか、という話だと思います。
「陽菜か?天候か?」の二択に対し主人公は迷わず陽菜を選びました。『天候の狂った世界で、陽菜と生きていく』事を選んだ帆高。前作と同じテイストで描くなら、人柱として天候の安定のために陽菜を犠牲にするという展開を覆し彼女を救った上で世界の異常気象は解除されるというエンディングで終わるかと思います。
しかし、本作ではエンディングは違いました。陽菜を救う代償として『晴れ』を失った東京。陽菜を人柱にして天候を安定させることをやめた帆高の選択によって、三年間東京は雨が降り続くという異常気象。
事象を無かったことにして世界を改変させた『君の名は。』とは異なり、主人公が自分の中での優先順位に従って動いた結果、ヒロインは助かり東京は『晴れ』を失った。
何かを救うためには優先させるためには、何かを失う。前作と違い手放しでハッピーエンドとはいえない展開で終わった『天気の子』。わかりやすいハッピーエンドによって劇場内で完結した『君の名は。』とは異なり、エンディングに議論の余地があり劇場の外で、家でその内容に考察を重ねることで『生き続ける作品』だと感じました。
スッキリとしないエンディングには新海作品『らしさ』を感じつつも、結果としてヒロインの救出には成功している点はハッピーエンドともいえる。古参ファンも前作で注目を浴び一気に獲得したファンをも納得させられる絶妙な落としどころだったのではないかと思います。
『晴れ女』を題材に扱いながら、ヒロインを救いながらもエンディングは晴れ間ではなく曇りというどっちつかずの天気で終幕した本作。今後は本作のようにスッキリとしないエンディングの内容で疑問を投げかける作品を描いていくんだという監督の意思表示を感じました。
しっかりとした本編に充実したファンサービス、素晴らしいエンターテイメントだと思います。そして、なにより前作よりも『らしさ』が感じられる構成にした点は賞賛されるべきだと思う。『君の名は。』という万人ウケする作品に胡座をかかず、そのプレッシャーに負けず自分の作風を貫いた姿勢は素晴らしい!
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